[74]
神は、「すべての人々が救われて真理を知るようになることを望んでおられます」(一テモテ2∙4)。その真理とは、キリスト・イエスのことです
ヨハネ14・6参照。。したがって、キリストはすべての国民、すべての人に告げ知らされ、こうして、啓示が世界の隅々まで及ばなければなりません。
「神は、万民の救いのために啓示したそのことが、永久に、かつ完全に保たれ、あらゆる世代に伝えられるよう、いともやさしく取りはからわれました」『神の啓示に関する教義憲章』,第7項。。
[75]
「主キリストは至高の神の全啓示が自らにおいて完了されるため、かつて預言者によって約束された福音を自ら実現し、かつご自分の口をもって宣布しましたが、これを救いに関するあらゆる真理と道徳の源として、すべての人にのべるよう、また彼らに神のたまものを与えるよう使徒たちに命じました」『神の啓示に関する教義憲章』,第7項。。
[76]
主の命令に従い、福音の伝達は二つの方法で行われます。
⸺口述で。「キリストのことばを聞き、キリストとともに生活し、そのわざを目撃して知ったこと、あるいは聖霊の示唆から学んだことを説教と模範と制度をもって伝えた使徒たちによって」。
⸺書によって。「同じ聖霊の霊感により救いの知らせを書き物にした使徒たちとその周りの人たちによって上」『神の啓示に関する教義憲章』,第7項。。
[77]
「使徒たちは、生きた完全な福音が、つねに教会に保存されるよう、司教たちを後継者として残し、彼らに『自分たちの教導職を与えました』」『神の啓示に関する教義憲章』,第7項。。実際、「使徒的宣教は、霊感の書に特別に示されていますが、不断の継承によって世の終わりまで保たれねばなりませんでした」『神の啓示に関する教義憲章』,第8項。。
[78]
聖霊のうちにあって遂行されるこの生きた伝達は、聖書とは異なるものとして聖伝と呼ばれます。いうまでもなく、この聖伝は聖書と密接に結びついています。この聖伝により、「教会は、その教義と生活と典礼とにおいて、自らあるがままのすべてと、信じることのすべてを永続させ、あらゆる世代に伝えるのです」『神の啓示に関する教義憲章』,第8項。。「聖なる教父たちのことばは、聖伝のこの活力的な現存を証明するもので、その富は信じかつ祈る教会の慣行と生活に注ぎ込まれています」『神の啓示に関する教義憲章』,第8項。。
[79]
こうして、御父がみことばによって、聖霊のうちに、ご自分についてお知らせになったことは、教会の中に現存し、働き続けています。「かつて語った神は、不断に愛する御子の浄配と語らい、福音の生きた声は聖霊によって教会に、また教会によって世界に響き渡り、そして聖霊は、信じる者をすべての真理に導き、彼らのうちにキリストのことばを豊かに宿らせるのです」『神の啓示に関する教義憲章』,第8項。。
[80]
「聖伝と聖書とは互いに固く結ばれ、互いに共通するものがあります。なぜならば、どちらも同一の神的起原を持ち、ある程度一体をなし、同一の目的を指している」『神の啓示に関する教義憲章』,第9項。からです。どちらも、「世の終わりまで、いつも」(マタイ28∙20)弟子たちとともにとどまることを約束されたキリストの神秘を、教会の中に現存させ、実らせるものです。
[81]
「聖書は、聖霊の霊感によって書かれたものとしての神のことばです」。「聖伝は、主キリストと聖霊から使徒たちに託された神のことばを余すところなくその後継者に伝え、後継者たちは、真理の霊の導きのもとに、説教によってそれを忠実に保ち、説明し、普及するようにするものです」『神の啓示に関する教義憲章』,第9項。。
[82]
したがって、啓示の伝達と解釈をゆだねられた教会が、「啓示されたすべてのことについて自分の確信を得るにあたって、聖書だけに頼らないのはそのためです。それゆえ、どちらも同じ敬謙と敬意をもって尊敬されるべきものです」『神の啓示に関する教義憲章』,第9項。。
[83]
ここで述べられている聖伝は使徒たちに由来するもので、使徒たちがイエスの教えと模範から受けたことと、聖霊によって学んだこととを伝えます。実際、初代のキリスト信者はまだ書としての新約聖書を持っていませんでしたし、新約聖書そのものが、生きた伝承の形成の次第を示しています。
地方教会では時とともに、神学、おきて、典礼、あるいは信心上の「諸伝承」が生まれました。これらと上述の聖伝とは区別されなければなりません。諸伝承は、個々の様式を持っているので、その中から、異なる場所、異なる時代にも適応した表現を大伝承(聖伝)が受け取ります。そしてその大伝承に照らし合わされ、教会の教導権の指導のもとで、諸伝承は維持されたり、修正または放棄されたりするのです。
[84]
聖伝と聖書の中に含まれるゆだねられた信仰の遺産1テモテ6・20、2テモテ1・12-14参照。は、使徒たちによって教会全体に託されています。「この委託物によって、聖なる民全体が、その牧者を中心にして、使徒たちの教えと、信者の交わりと、パンを裂くことと、祈りとを不断に続けています。そのために、伝えられた信仰を守り、実践し、信奉するにあたって、司教と信者との特殊な一致が実現します」『神の啓示に関する教義憲章』,第10項。。
[85]
「書きもの、あるいは口伝による神のことばを権威をもって解釈する役目は、キリストの名で権威を行使する教会の生きた教導権だけに任せられています」『神の啓示に関する教義憲章』,第10項。。教会の教導権を持っているのはペトロの後継者、ローマ司教と結ばれた司教たちです。
[86]
「しかし、この教導権は神のことばの上にあるものではなく、むしろ、これに奉仕し、伝えられたことだけを教えるのです。すなわち、神の命令と聖霊の援助によって、神のことばを敬謙に聞き、清く保存し、忠実に説明し、そして信ずべき神の啓示として示すすべてのことを、信仰のこの唯一の委託物からくみ取るのです」『神の啓示に関する教義憲章』,第10項。。
[87]
信徒は、「あなたがたに耳を傾ける者は、わたしに耳を傾ける」(ルカ10∙16)第2バチカン公会議『教会憲章』,第20項(Lumen gentium)参照。とキリストが使徒たちにおおせになったことばを想起し、司牧者が多様な形で述べる教えと指針とを素直に受け入れます。
[88]
教会の教導権は、教義を決定的に宣言する場合、すなわち、キリストの民に信仰による決定的な同意を義務づける形で、神の啓示の中に含まれる諸真理を提示する場合や、これと不可分のつながりを持つ諸真理を決定的な形で提示したりする場合には、キリストから受けた権限を最高度に行使します。
[89]
わたしたちの霊的生活とこれらの教義の間には、有機的なつながりがあります。教義はわたしたちの信仰の道に設けられた灯火で、その道を照らし、確実なものとします。また、逆に、わたしたちの生活が正しければ、わたしたちの知性と心は素直に信仰の教義の光を受け入れるでしょうヨハネ8・31-32参照。。
[90]
各教義の相互関連と一貫性は、キリストの神秘の啓示全体の中に見いだすことができます『デイ・フィリウス』第4章DS3016 [mysteriorum nexus]) 、『教会憲章』,第25項参照。。「カトリック教義の諸真理とキリスト教信仰の基礎との関係は種々異なっているものですから、それらの諸真理の間に秩序、すなわち、『順位』が存在します」第2バチカン公会議『エキュメニズムに関する教令』,第11項(Unitatis redintegratio)。。
[91]
すべての信者は、啓示された真理の理解と伝達に関与します。自分たちを教え1ヨハネ2・20,27参照。、自分たちに「真理をことごとく」(ヨハネ16∙13)悟らせる聖霊の塗油を受けているからです。
[92]
「信者の総体は、信仰において誤ることができないのであって、この特性は、『司教をはじめとして信徒の果てに至るまで』信者の総体が信仰と道徳のことがらについてあまねく賛同を示すとき、神の民全体の超自然的な信仰の心を通して現れます」 『教会憲章』,第12項。。
[93]
「事実、神の民は真理の霊によって起こされ、支えられているこの信仰の心によって、聖なる教職の指導のもとに、ひとたび聖徒たちに伝えられた信仰を損なうことなく固く守り、正しい判断をもってその信仰をいっそう深く掘りさげ、それを生活のうちにより完全に具体化していくのです」『教会憲章』,第12項。。
[94]
ゆだねられた信仰の遺産の内容とことばの理解は、聖霊の助けにより、教会生活の中で発展することができます。それは次のことによってです。
⸺「それを心のなかで思いめぐらす信者たちの黙想と研究」『神の啓示に関する教義憲章』,第8項。、とくに「啓示された真理についての神学的探究」第2バチカン公会議『現代世界憲章』,第62項 (Gaudium et spes)。『現代世界憲章』,第44項、『神の啓示に関する教義憲章』,第23項,第24項、『エキュメニズムに関する教令』,第4項参照。によって。
⸺「〔信者たちの〕体験する霊的な実在についての深い理解」『神の啓示に関する教義憲章』,第8項。によって。「神のことばを読んで成長する」聖グレゴリオス1世『エゼキエル書講話』(S. Gregorius Magnus, Homilia in Ezechielem 1, 7, 8: CCL 142, 87 [PL 76, 8431)。ことによって。
⸺「司教職の継承とともに真理の確かなたまもの(カリスマ)を受けた人たちの説教」『神の啓示に関する教義憲章』,第8項。によって。
[95]
「それで、聖伝と聖書と教会の教導権とは、神のきわめて賢明な配慮によって、一つは他のものから離れては成り立たず、全部が一緒に、そしておのおのが固有のしかたで、聖霊の働きのもとに、救霊に有効に寄与するように、互いに関連し、結合されていることは明らかです」『神の啓示に関する教義憲章』,第10項。。
[96]
使徒たちはキリストからゆだねられたものを、聖霊の霊感のもとに、説教と書物とによって、キリストの栄光に輝く再臨の日まで、すべての世代に伝達しました。
[97]
「聖伝と聖書とは、神のことばの一つの聖なる委託物を形づくっています」『神の啓示に関する教義憲章』,第10項。。旅する教会はこのゆだねられた遺産に、鏡の中で見るかのように、あらゆる富の泉である神を見つめます。
[98]
「教会は、その教義と生活と典礼とにおいて、自らあるがままのすべてと、信じることのすべてを永続させ、あらゆる世代に伝えるのです」『神の啓示に関する教義憲章』,第8項。。
[99]
超自然的な信仰の感覚のおかげで、神の民の総体は神によって与えられた啓示のたまものをたえず受け入れ、それをより深く理解し、ますます完全に生活の中で実践していきます。
[100]
神のことばを権威をもって正しく解釈する任務は、教会の教導権、すなわち、教皇と教皇に結ばれた司教にのみゆだねられています。